日々小論

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 子どものころ、鬼になったことがある。確か小学4年生のときのことと記憶するが、正確に言えば、演じた。

 地元のお寺に平安末期に始まったとされる「鬼踊り」なる行事があり、子鬼の役がめぐってきた。水干ともんぺが融合したような和服に、不思議なかぶりものをかぶって踊る。

 見物客から「かわいい」などと言われてまんざらでもなかったが、大人の演じる大鬼は鬼面にたいまつを持ち、見るからに恐ろしい。平和と豊作を願っての舞である。

 「鬼」とは何だろうか。一説には、「隠」の字音「オン」が「オニ」に転じたという。つまり、目に見えぬ隠れたもののけのことを指したと思われるが、鬼ほど多様性に富んだ妖怪もあるまい。

 昔話に出てくる人食い鬼や人さらいの鬼、あるいは人間にこらしめられる鬼もあれば、童話「泣いた赤鬼」のように人間と友だちになりたいと願う鬼もいる。そして、私たちに福をもたらす鬼も。

 そんなに人気があるのなら、と半ば物見気分で、アニメ映画「劇場版『鬼滅(きめつ)の刃(やいば)』無限列車編」を見た。原作では、主人公の少年剣士が鬼と化した妹を人間に戻すために…という物語だが、登場する悪鬼たちにも一抹の人間性が描かれる。

 人が時として鬼になり、鬼に人の心があり-。古典から現代漫画まで鬼が教えてくれることは一貫しているようでもある。もしも、人間界に恐怖と混乱をばらまくウイルスが鬼だとすれば、そうした不安感から他人を攻撃したり、差別したり、人の内面にもいまほど鬼が出やすいときはない。

 「鬼滅」。なるほど、強くてやさしい心の刃が要る。

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