日々小論

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 新型コロナウイルス感染症の「第3波」が押し寄せるまで、世の中は解禁モードに切り替わっていた。長く自粛していた活動があちこちで再開し、以前の姿を取り戻しつつあった。

 個展やグループ展の案内が次々に届くようになったのも、秋口になってからだ。時間が許せば足を運ぶようになった。

 巣ごもり中に作風が変化した画家がいる。本人も誰だか分からない若い女性が、繰り返し絵に登場する。ふと心に浮かんだイメージなのだと話す。

 発見と驚きを伝えて作者と語り合えるのは、ギャラリー巡りの楽しみだ。コロナ禍の緊張からも解放される気分になる。

 何より久しぶりに顔を合わせると、あれこれ会話が弾む。

 ある書家は阪神・淡路大震災の起きた1月に毎年神戸で作品を公開してきた。負けない、忘れない、伝えたい…。いろんな思いを筆に託してきたが「もうやめたい」と語りだした。

 25年たてば人の心も移ろう。日常生活の中で震災は次第に遠くなり、市街地の景色も随分変わった。幕引きを考える心境は分かる気がする。

 でも、やめたら何も伝わらない、どんな形であれ自分の表現を続けることに意味があるのでは、などと語り合った。

 京都大前学長の霊長類学者、山極寿一さんによると、向き合って顔や目を見てコミュニケーションを図るのは人間とゴリラの特徴なのだという。ニホンザルの場合は、相手の目を見ることが威嚇行為になるそうだ。

 顔を見てなごむのがヒトという種の本性とすれば、知人との対話が深まったのもうなずける。「第3波」の急拡大でそうした機会は減りそうだが、今は安全な距離を保ちつつ、対話の続きを心待ちにしたいと思う。

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