日々小論

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 アフガニスタンで用水路づくりなどに取り組んできた医師中村哲さんが凶弾に倒れて、もう1年になる。容疑者はまだ捕まっていない。

 つい先日、支援活動に携わる知り合いからメールが届いた。中村さんが「天台特別振興賞を受ける」とある。クリスチャンである中村さんと天台宗。どんな縁だろうか、天台宗務庁に尋ねた。

 つながりは、天台宗の開祖、最澄が残した有名な教え「一隅を照らす」だという。一隅とは片隅という意味だ。社会の片隅であっても懸命に生きる。尽くす。そんな人こそ、なくてはならない国の宝、と説く。

 どこにいようと、やれることをやろう。精いっぱい生きよう、というススメだろう。

 この「一隅を照らす」を、中村さんは好んで使ったそうだ。どこで知ったのかは、よく分からない。しかし色紙を求められると、「照一隅」としたためている。

 なるほど「照一隅」の人生だったと、あらためて思う。

 医療支援に入った地で、貧しさの後ろにある農業の荒廃を目にする。干からびた大地に水をと、井戸を掘り、自ら重機を操って用水路を引いた。やがて荒れ地に緑がよみがえる。

 自慢話はしなかった。武勇伝も口にしない。固い意志を朴訥(ぼくとつ)な語りにくるんでいた。

 大黒柱を失うと、とかく活動は陰りがちになる。しかし中村さんが現地代表を務めたNGO「ペシャワール会」のアフガン側スタッフは意欲を失っていない。日本の支援団体にも新たな若者が加わっている。

 一隅を照らしたともしびが、小さなともしびになって、さらにあちこちに。悲しい事件だったが、ちょっと救われる。

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