日々小論

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 大学生のとき、同じ下宿にいたジャズ好きの友達が「入門用や」と、次々に手持ちのレコードを貸してくれた。マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ジョン・コルトレーン…。中でもマイルスの「カインド・オブ・ブルー」は針を置いたとたん、1曲目の冒頭があまりに印象的で、強く引きつけられた。

 マイルスが時代とともに演奏を進化させ、「ジャズの帝王」と呼ばれたことは、後に本で読んで知った。

 今年、日本で公開された映画「マイルス・デイヴィス クールの誕生」は、トランペッターとして歩んだ彼の生涯をたどるドキュメンタリーだった。

 たった一音で人々を魅了するその音楽性を浮かび上がらせるとともに、厳しい黒人差別を受けた苦悩も描いていた。

 この映画の中で、一つの事件が取り上げられている。

 1959年8月、ニューヨークの名門ジャズクラブ・バードランドの前で、マイルスと白人警官の間にちょっとしたトラブルが起きる。彼はクラブの出演者であることを告げるが、指示に従わなかったため警棒で殴られ、逮捕されてしまう。

 これが、歴史的な名盤である「カインド・オブ・ブルー」が発売されて1週間後に起きた出来事だったことに、驚いた。

 マイルスは、この事件が自分自身を気難しく冷淡に変えたと語っている。映画には、殴られて血まみれになった彼の写真が出てくる。カメラを見つめる鋭い視線は「なぜだ?」と問いかけているようだった。

 残念ながらそれは昔話ではなく、半世紀以上たっても、米国では白人警官らによる黒人への差別的な暴力が絶えない。疑問に満ちたマイルスの目は、今の社会にも向けられている。

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