日々小論

  • 印刷

 新型コロナウイルスの感染防止にマスクは欠かせない。ウイルスの怖さを知っているからだ。一方、髪の毛の5千分の1の微細なアスベスト(石綿)繊維が飛散する中で働く労働者にはかつてマスク着用は義務付けられていなかった。

 国は危険性を知りながら適切な規制を怠った-。2014年の製造・加工工場の被害を巡る大阪・泉南の訴訟の最高裁判決に続き、先日、建設労働者らによる訴訟でも国の賠償責任が確定した。建材メーカーの責任も審理される見通しだ。病に斃(たお)れた無数の声なき声が100年の時を超えて救済の重い扉をこじあけた。そんな感慨を覚える。

 石綿産業は長く国策として推進されてきた。ニチアスは「日本アスベスト」の社名で業界をリードし、前身が「野澤石綿セメント」のノザワは石綿スレートを初輸入したパイオニアだ。戦後、時の商工大臣が業界団体の機関誌に「石綿 新産業文化の創建へ」と寄稿している。

 一方、健康被害は石綿肺で1930年代、肺がんは40年代、中皮腫は60年代に医学的な知見が集積された。戦前から国は危険性をつかんでいたにもかかわらず、実効策を講じなかったことが一連の訴訟で明確になった。

 石綿の国内消費量は1千万トンに上り、その7割以上が建材に使われた。建設、修理、解体で労働者は危険にさらされ、大震災が起きると大規模な倒壊ですさまじい粉じんが街に飛散する。工場から周辺への環境被害はアジア最悪の被害となった尼崎のクボタ問題が明確に示す。

 労災と公害は連続しており、社会のあちこちに埋め込まれた石綿が過去、現在、未来にわたって私たちを苦しめる。コロナと同様、石綿禍は現在進行形なのだということを胸に刻む。

日々小論の最新
もっと見る

天気(2月26日)

  • 9℃
  • ---℃
  • 50%

  • 9℃
  • ---℃
  • 20%

  • 10℃
  • ---℃
  • 50%

  • 10℃
  • ---℃
  • 50%

お知らせ