この1年間に頻繁に耳にした言葉の一つに「医療崩壊」がある。医療のシステムが機能しなくなる恐ろしい状況を指す。
その医療を巡って記憶に残ったニュースを一つ紹介したい。
今年10月、神戸市中央区の市立医療センター中央市民病院に500万円の寄付が匿名で届いた。「役立てて」などと書かれた便箋も同封されており、コロナ対応や小児医療などに活用されたという。
500万円と言えば大金だ。だが印象に残った理由はそれだけではない。現金が入っていた茶封筒に「病院」「小児がん」の切り抜き文字が貼ってあった。差出人の名前に心当たりがないため開封せず返送したところ宛先不明で戻ってきたそうだ。住所も架空だったわけだ。
ミステリアスな点が多く、想像が膨らむ。中央市民病院はコロナ患者の治療で基幹的な役割を担うが、拡大する院内感染に苦しんだ時期があった。職員や家族への心ない中傷や差別も相次いだ。寄付の主は、こうした苦境を知り、何とか応援したいと考えたのではないか。
かつてない規模の「第3波」に歯止めがかからず、各地の医療現場から再び悲鳴が上がっている。筆者が通う地元の病院でも最近、感染者集団が発生し、診療縮小を余儀なくされた。スタッフの苦悩が脳裏に浮かぶ。
これまで医療崩壊を実生活で実感したことはなかった。今年に入って気配を身近に感じ、身震いしている。現在できる最大の応援は感染者を増やさないことであるのは言うまでもない。
来年こそは、コロナ前の生活を取り戻したい。そのためにも小池百合子東京都知事が言うように、いまはコロナを避ける「ウィズアウトコロナ」に徹するしかないのではないか。
