日々小論

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 2020年の世相を表す「今年の漢字」は「密」だった。京都・清水寺の森清範貫主が力強く揮毫(きごう)した。新語・流行語大賞にも「3密」が選ばれた。

 密閉、密集、密接を避ける。コロナ禍のため、これまでにない生活様式を強いられた1年だった。それが今も続く。

 人と2メートルほど離れるソーシャルディスタンス(社会距離)が推奨されてきたが、これを聞いたとき、昔読んだ「かくれた次元」という本を思い出した。米国の文化人類学者、エドワード・ホールが書いた名著だ。

 ホールは人と人との感覚的な距離を分類し、近い方から密接距離、個体距離、社会距離、公衆距離の四つがあると述べた。

 その社会距離は1メートル20センチ~3メートル70センチ。2メートルの辺りで近接相と遠方相に分かれる。近接相は仕事場や社交上の集まりでの距離で、遠方相は形式ばった業務、会話のときの距離だという。

 お偉方の机を挟んだ距離が、遠方相の例として挙げられている。つまりは2メートルを境に親密ではなくなるということだ。

 飲食店では席の間隔を空けていることが普通になった。ゆったりするのはいいが、居酒屋などでは知人同士あるいは見知らぬ同士が、ホールの言葉を借りるなら密接距離や個体距離で一献傾けるのが何よりだった。

 密集した路地裏の店が魅力的に思えるのも、人と人とが触れ合う温かみのようなものを感じるからだろう。

 この正月は、家族や親類がこたつに集まって、にぎやかに過ごすことさえできなかった家庭も多かったに違いない。今年は何とかコロナを収束させ、遠慮なく人と会い、近しい空間で食事をしたり音楽を聴いたりしたい。「密」の文化が戻ってくることを心から願う。

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