新型コロナウイルスの勢いが止まらない。命を守る医療は既に崩壊の危機にある。
なるべく外出は控え、人との接触も極力減らす。再び「巣ごもり」を求められている。
政府が首都圏に緊急事態宣言を再発令し、兵庫、大阪、京都の3府県も発令を要請した。しかし、飲食店の時短営業などで抑え込みは不可能だと、多くの専門家が指摘する。
世論調査でも、7割が感染の抑制を「期待できない」と答えている。「1カ月後には必ず事態を改善させる」という菅首相の言葉を、大半の国民は半信半疑で聞いた。
私たちは長く厳しい冬を覚悟するしかないようだ。
心配なのは深刻な影響をこうむる人たちのことである。
収入や仕事を失う。家賃を払えず住居に困る。DVや虐待で苦しむ女性や子どもは逃げ場をなくすことになりかねない。
コロナ禍の恐ろしさは、命と健康の危機にとどまらず、心と暮らしを守る大事なものを無情に破壊することにある。
NPO代表の立場で自殺対策に取り組む清水康之さんによると、経済の落ち込みで自死のリスクは高まっている。だが、収入や雇用を失っただけで人は命を絶たないとも語る。
多重債務や病気、心の不調、家庭内の不和…。子どもの場合は学校でのいじめなど、多くの要因が重なることで生きる力をそがれていくのだと。
だとすればコロナ禍で政府がなすべきは、医療拡充と併せ、自治体と協力して孤立しがちな人を追い詰める問題を一つ一つ解消する取り組みだろう。「Go To」延長に計上した補正予算案の1兆円を、支援がなかなか届かない人たちへの施策に全額、振り向けてはどうか。
