阪神・淡路大震災で神戸市内の実家が一部損傷した。地震保険に入っていたため、いくばくか保険金が支払われた。
当時の地震保険の世帯加入率は9%。「よく掛けていたな」と話し合った記憶がある。
震災の2年前に亡くなった父親が加入したと思っていたが、実は手続きは父親の死後だった。火災保険の更新時に地震保険を追加したことを、当の私たちが失念していたのである。
あれほどの大地震が来るとは正直、思わなかった。
26年前の震災では25万棟の住宅が全半壊した。46万世帯の住まいである。被災者が声を上げて国を動かし、住宅再建への公的な支援制度が実現した。
ただ、それだけでは十分と言えず、国や自治体の公助を補う共助も必要とされる。そうした仕組みがほとんどなかった反省から、再建や補修などに給付金を出す兵庫県の「フェニックス共済」が震災後に生まれた。
保険や共済という仕組みは、損失を加入者の掛け金などで補填(ほてん)する。「相身互い」の精神だが、他の人にリスクを転嫁する側面もある。それならあまり大きな負担をかけない手だても考えるべきだろう。
「事後のリスク転嫁だけでなく、事前にリスクを軽減しておく仕組みを取り入れる必要がある」。住宅復興が専門の近藤民代・神戸大大学院准教授はそう指摘する。実際、ハリケーンの水害で甚大な被害が出た米国では、床を高くする、地盤を強化するなどが、水害保険加入の要件とされているそうだ。
耐震化などは個々に手間と負担が伴う。とはいえ、自ら実施した防災・減災の取り組みなら忘れることはないだろう。
災害は必ずやって来る。この時期、改めて肝に銘じたい。
