日々小論

  • 印刷

 神戸市長田区の下司(げし)幸子さんが先ごろ自費出版した「絵手紙さんぽ」は、自身の絵手紙作品を集めたカラフルな1冊だ。多くは家族が題材で、娘さんが添えた文章も相まって、心が温かくなる。

 ところが巻末に近づくと雰囲気が一変する。1945年6月5日、当時4歳の下司さんが遭遇した神戸空襲をテーマにした絵手紙や文章がちりばめられているのだ。

 目の前で焼夷(しょうい)弾に撃たれ動かなくなる男性。亡きがらと思われる母親の傍らで泣く赤ちゃん。樹木が燃える赤々とした炎…。須磨区にあった自宅から避難する際に目撃し、記憶に刻まれた光景の描写に、ページを繰る手が思わず止まる。

 戦後75年の節目に当たる昨年は、多くの関連行事がコロナの影響を受けた。神戸で予定されたカナダ在住の被爆者サーロー節子さんの講演会や、姫路での戦争体験者の話を聞く会なども中止に追い込まれた。

 筆者もこうした取材がかなわず、悔しさが残る。一方、ウェブ会議での戦後75年の勉強会では、証言する被爆者の危機感がパソコン画面というフィルターによって半減しているように感じられ、もどかしさが募った。

 平和記念館の実現を神戸市に求める市民団体の代表でもある下司さんは本にこうも記している。「もうすぐ戦争体験者がいなくなり(中略)次の世代に伝えなければなりません。(前略)これからは加害の側面もあわせて、戦争の全体像を語る工夫がいるように思います」

 今年もはや1カ月が過ぎた。コロナの先行きは見通しにくいが、昨年の悔しさと経験を忘れず、できることを積極的に探りながら、戦後76年に向き合っていきたい。

日々小論の最新
もっと見る

天気(4月16日)

  • 19℃
  • ---℃
  • 60%

  • 21℃
  • ---℃
  • 60%

  • 20℃
  • ---℃
  • 60%

  • 19℃
  • ---℃
  • 50%

お知らせ