日々小論

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 漫画家のヤマザキマリさんはイタリアに住む。古代ローマの浴場が舞台の代表作「テルマエ・ロマエ」は映画にもなった。

 先月末のNHKラジオで、そのヤマザキさんが「昭和」について語っていた。かいつまめば、こんな話である。

 「仮面ライダーにしろタイガーマスクにしろ、人気を呼んだ昭和の漫画には孤高のヒーローが多かった。1人で立ち向かう。昭和のアイドルもそうだ。大勢の観客の前に1人で立ち、歌った。そんな孤独のヒーロー、ヒロインを演出したのが昭和という時代だった。でも今は違う。アイドルもグループで踊って歌う」

 そうだなあ…とうなずきながら聞き終えると、浮かんだ人がいた。作家にして作詞家、なかにし礼さんである。

 安倍内閣が集団的自衛権の行使容認という閣議決定に踏み切ったあたりから、なかにしさんは「平和を守れ」と発言するようになった。戦火を逃れ、つらい引き揚げを体験した者として黙っておれなくなった。

 平和運動にかかわる市民団体から講演の依頼がいくつも来たそうだ。申し訳ないと思いながらすべて断ったと、著書「生きるということ」にある。

 なぜなら「異端であり前衛であり自由であることが僕なんだから」。だから「どういう集団にもくみしない」。1人で悩み、挑む。本当の共感はそこから生まれるのではないか、と。

 戦争を知る世代がみんなそうだとは思えないが、まずは1人ですくっと立とうとする。ヤマザキさんの言葉を借りれば孤高であろうということか。

 なかにしさんも亡くなった。昭和は遠ざかり、後ろ姿が小さくなる。背中を見ながら、寂しいなあとつぶやいてしまう。

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