日々小論

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 「歴史探偵」を自任した作家の半藤一利さんが、歴史上の人物で一番好きだったのは、勝海舟と鈴木貫太郎だという。先ごろ訃報に接した際、著書で明かしていたのをふと思い出した。

 幕末に活躍した勝は言わずと知れた江戸城無血開城の立役者である。一方、終戦時の首相だった鈴木の最大の功績は、ポツダム宣言の受諾に貢献したことだろう。

 半藤さんがあまたの候補から2人を挙げたのは興味深い。なぜ一番なのか。冒頭の著書「歴史に『何を』学ぶのか」(筑摩書房)では明確に述べていないが、次の一文に注目したい。

 「危機にあっては正面からぶつかって、本気になって考え抜き、どこでチャンスを見いだすかということに最大の神経を払う。鈴木さんと勝さんは、それをやった人でした」

 考えてみれば、2人には共通点がある。追い込まれた戦局に直面し、徹底抗戦の動きもある中、戦いを避け、あるいは終える努力を尽くした。半藤さんは自らの信条に共鳴する部分を感じ取っていたのではないか。

 「日本のいちばん長い日」「聖断」「幕末史」…。半藤さんは先の大戦を巡る真実を徹底的に究明し、平和の尊さを発信した。同時に、この国の近現代史を分かりやすい語り口で表現して、歴史を学ぶ楽しさ、大切さを伝え続けた。

 半藤さんが90歳で亡くなって1カ月余りがたつ。一度もお目に掛かったことはなく、膨大な作品群の一部しか読んでいないが、心に大きな穴があいたような気がする。

 思い立って、図書館で著書5冊を借りた。夜、自宅でページを繰りながら、まだまだ学ぶべき事実が多いことを改めて痛感している。

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