日々小論

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 「おっとっと、あぶないですよ」。朝の慌ただしい通勤電車内に、場違いなほど優しい声のアナウンスが流れた。他の乗客も不思議そうに周囲を見回している。続く車掌さんの説明で、おおよその事情がのみ込めた。「小さなお子さま連れのご乗車には思わぬ危険があります。余裕を持ってお乗りくださいね」

 発車間際に乗り込もうとした親子連れが、ドアに挟まれそうにでもなったのだろう。とっさに出た言葉かもしれないが、「駆け込み乗車はおやめください」といった決まり文句でなく、きちんと相手を思いやる口ぶりに、ひととき心が和らいだ。

 日本の車内アナウンスといえば「うるさい」「お節介」などと、とかく評判が悪い。「出口は右側です」「忘れ物にご注意を」「携帯電話での通話はお控えください」…。最近では「マスクの着用や咳(せき)エチケットにご協力を」という文言もおなじみになった。感染対策は大事だがすでに誰もがマスクを着け、会話すら控えている中、マニュアル通りの言葉は、むなしい。

 それにしても、先ほどの呼び掛けは良かったなあ。電車に揺られながら、つらつら考える。海外に比べて過剰といわれる車内放送だけれど、それを逆手にとって、いっそ日本の名物にしたらどうだろう。特に関西人ならば、うるさいほどのお節介は朝飯前のはず。ただし、あくまで自分の言葉で。

 降車駅に着いた時、たまたま車掌さんと目が合った。声に似つかわしく優しい面差しの彼は、少しほほ笑んで会釈してくれた。車内放送に限らず、社会のいろんな場で働く人が彼のように振る舞えたなら、ずいぶん住みよい世の中になるんじゃないかしら。もちろん、私自身も大いに見習いたい。

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