日々小論

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 あのボールがなぜ打てないのだろう。素人目にはそう映った。球速だけをとれば、どうってことのない130キロ台。それをプロの強打者が打てない。

 元ヤクルトの投手、安田猛さんである。抜群の制球力が持ち味だった。81イニング連続無四死球、つまりマウンドで大きく崩れないプロ野球記録を残し、73歳で亡くなった。

 小柄で小太り。多くの訃報記事が愛称の「ペンギン」に触れていた。いや、それよりもっと似つかわしい言葉がある。

 「超二流」

 野村克也さんがよく口にしたが、そもそもは名監督三原脩さんの教えである。

 えりすぐりの若者が集まるプロ球界でも、超一流のスーパースターはほんのわずかだ。一流と言われる選手もそんなに多くない。自分の武器は何かを考え、磨き、努力を重ねたら超二流にはなれる。その力はときに一流をしのぐ、と三原さんは若手を励ました。

 安田さんは自分のことを「超二流」と呼んでいたと、スポーツライター永谷脩さんが書いていた。たとえば-。

 変化球の数を問われると「わかんない」と答えた。どんなボールもスピード差で3通りあったからだ。カーブ、シュートなど全部で7種類を投げたとすれば、7×3=21。変化球は21種類ということになる。

 それを「逃げのピッチング」と言われると本気で怒った。「攻めながらかわす。王さんにだって真っ向勝負だ」と。ペンギンはペンギンでも皇帝ペンギンだと、永谷さんの筆は熱い。

 春、間近。若者たちが社会へ出ていく季節だ。

 安田さんのようなコクのある人生に挑む人もいるだろうと、ちょっと想像してみる。

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