日々小論

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 「前畑がんばれ」の流行語が生まれた1936年のベルリン五輪は「ヒトラーのオリンピック」とも呼ばれる。ギリシャからの聖火リレーを初めて行い、10万人規模のメインスタジアムが観衆を圧倒した。五輪を通じて力を誇示したナチスドイツは3年後、ポーランドに侵攻し、第2次世界大戦が始まった。

 「平和の祭典」とされる五輪だが、戦争と無縁でない。日中戦争の拡大で40年の東京大会が幻に終わった経緯は大河ドラマ「いだてん」でも描かれた。44年のロンドン大会も第2次大戦の激化で中止になっている。

 「ベルリンで日の丸が掲揚され、君が代が演奏されるたびに日本人の多くは神州不滅のナショナリズムに共鳴し、ドイツ・ファシズムを唱導するヒトラーをたたえた」

 8年前に2度目の東京大会開催が決まった際、本紙に載った映画監督篠田正浩さんの寄稿の一こまである。85年前のベルリン大会の当時、篠田さんは5歳。二・二六事件の半年後のことで、五輪は日本全体が軍国主義に傾斜する一つのきっかけになったと振り返る。心に深く刻まれた暗い思い出なのだろう。

 コロナ禍で1年延期された開幕まで5カ月を切り、東京五輪・パラリンピックにとって再び難しい判断の時期が迫る。

 篠田さんは寄稿を実感がこもった次の言葉で締めている。「次の東京五輪が平穏な世界で開かれますように。今はそう祈るばかりである」

 今なおコロナの収束が見通せず、開催への慎重論が広がる中、安全な大会の在り方を巡る議論が活発化している。その一方で、平和の祭典の名にふさわしい五輪という大切な視点がどこかに追いやられているような気がして、何ともさみしい。

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