日々小論

  • 印刷

 未知のウイルスが暮らしに入り込んで1年が過ぎた。自粛要請に応じた店が持ちこたえられず廃業する。まさか自分が、と思っていた人が突然職や住まいを失う。「自助」では解決できない理不尽な問題があると実感させられる日々だった。

 思い起こすのは昨春、感染から生還したジョンソン英首相が病床で発した「社会というものはまさに存在する」とのメッセージだ。「社会なんてものは存在しない」(サッチャー元首相)と自己責任を重視する新自由主義の継承者とされる保守党党首の発言だけに、国内外で驚きをもって受け止められた。

 公務復帰後はロックダウン(都市封鎖)と同時に手厚い休業補償策を講じ、国民保健サービスの保護を訴えた。元来の政治信条が一変したとは考えにくいが、当事者として問題に向き合い政策に反映させようとする姿勢にはインパクトがあった。

 海を越えなくても、身近な地域で貴重な経験が語られ始めた。本紙地域版から紹介する。

 感染から職場復帰した男性。周囲に迷惑をかけたと落ち込み、重症化の不安や誹謗(ひぼう)中傷への恐怖にさいなまれる日々を、家族や友人、同僚、近所の人たちの励ましが支えてくれた。

 自らも感染リスクと差別にさらされながら、自宅療養を希望する高齢の患者や家族に寄り添う開業医は、動画やブログで現場からの提言を発信している。

 社会はある。差別や偏見で人を傷つけるのも、問題に気づき人を救うのも社会であり、コロナ禍は私たちがどんな社会を選び取るかを問い続けている。

 正解は分からないが、過酷な経験を語る勇気ある言葉に耳を傾け、支え合う社会へのヒントを得たい。そこに「新しい日常」の希望があるのではないか。

日々小論の最新
もっと見る

天気(5月13日)

  • 26℃
  • ---℃
  • 20%

  • 28℃
  • ---℃
  • 10%

  • 25℃
  • ---℃
  • 10%

  • 24℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ