日々小論

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 古い写真を見ている。

 質素な衣をまとい、つえをついて歩く男性の写真だ。口元にかすかな笑みがある。周りを何人かの男女が囲んで歩く。

 インド独立運動の指導者、ガンジーである。1930年のちょうど今ごろ、遠く離れた海を目指して歩き始めた。その様子を映した1枚だ。

 植民地だったインドでは、英国が塩を独占していた。私たちも塩をつくろうと訴え、彼は海へ向かったのだ。

 強権的な支配への抵抗は、暴力ではなく不服従で表す。つまり従わない。その精神を目に見える形で表した行動は、後に「塩の行進」と呼ばれた。これを機に非暴力不服従運動がインド全土に広がったとされる。

 歴史を語る1枚を見ながら思うのは、現代のミャンマーである。クーデターで実権を握った国軍に対し、多くの国民が不服従の運動に入った。職場を離れ、軍政に従わない意思を示すためだ。口にするのはたやすいが、銃弾にさらされながらの不服従運動は、強い信念と覚悟、そして勇気がいるだろう。

 残念ながら、日々届くニュースはやりきれない。しかし、と思う。不服従運動が軍にまで広がることはないのだろうかと。

 前例がある。14年前、僧侶のデモを武力で制圧せよと命令されながら、5人の将官と約400人の兵が従わなかったと報じられた。命令と良心が天秤(てんびん)の上で揺れる兵はきっといる。

 竹山道雄作「ビルマの竪琴(たてごと)」は、日本占領期のビルマ(現ミャンマー)が舞台だ。敗戦後も現地に残った元兵士が戦友宛ての手紙に書く。この国の人々は「快活で謙譲で幸福です」「欲がなくて、心がしずかです」。

 つつましく穏やかな笑み。それが戻る日を心から願う。

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