日々小論

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 その23歳のミュージシャンは自分のことを「わし」と呼んでいた。素のままの岡山の方言。昨年夏、友人に「藤井風の歌、いいよ」と教えてもらい、彼の音楽を聴くようになった。

 演奏は動画サイトの「ユーチューブ」にあった。最初に見た動画では、高校時代のジャージーを着て床に座り、洋楽の弾(ひ)き語りをしていた。飾らない姿と歌唱力のギャップに驚いた。小学生で投稿を始めたという。

 一転、自作曲のミュージックビデオはニューヨークで撮影した洗練された映像だったが、それにも「あの時の涙は何じゃったん」と方言を使っていた。

 口コミやネットで人気が出始め、ファン層は50代以上までと幅があるようだった。

 幼い頃から父親のひざの上で歌謡曲やジャズ、クラシックなどを聴き、ピアノで弾いていたという。広い音楽性が世代を超えて心をつかんだのかもしれない。メロディーに加えて優しさに満ちた歌詞が印象的だった。

 昨年来、活躍の舞台が拡大した。アルバムは売り上げを伸ばし、武道館でのライブを実現させた。先日はニュース番組に出演し、コロナ禍で厳しい高校時代を過ごした後輩をはじめ、全国の卒業生に向けて「旅路」を演奏した。高畑充希主演のドラマの主題歌になった曲だ。

 「いつの間にか この日さえも懐かしんで 全てを笑うだろう 全てを愛すだろう」

 山陽新聞によると、出身地の岡山県里庄町役場にはサインなどが展示され、商店には「風君ノート」が置いてあるという。

 「藤井風」という風が小さな町から吹き始め、地元の人や学校の後輩たちを包み込んでいることがほほえましい。いつまでもジャージー姿で歌うような温かい音楽を続けてほしい。

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