日々小論

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 「店長がごはんごちそう。カツドンは世界一おいしい」

 彼が日記帳を見せてくれた。アルバイト先で教えられたこと、学校での出来事、その日の食事…。日本語で日記を付けなさい、と通っていた日本語学校の先生に勧められたそうだ。

 彼は20代のミャンマー人留学生だ。日本語学校を経て、今は専門学校で観光業を学ぶ。

 日記は2月3日から、母国語が増えている。それも書き殴ったような字に変わっている。

 2月1日、ミャンマーで国軍のクーデターが起き、アウン・サン・スー・チー氏ら与党国民民主連盟(NLD)の関係者が拘束された。抗議デモが弾圧され、声を上げた市民が軍によって殺害される。犠牲者の数は日を追って増えていく。

 3月14日の戒厳令発令を前に、彼は母国の父親とやりとりをした。父親は今、国軍に対抗してNLDの議員らがつくった臨時政府「連邦議会代表委員会」(CRPH)を支援している。帰国できず、じりじりとした思いを伝えると、父親はこう言ったそうだ。

 「これまでも民主化運動は軍に弾圧されてきた。だがこの10年で、国民は民主化が経済の発展をもたらすことを知った。もう戻れない」

 2011年の民政移管後、ミャンマーは空前の経済ブームに沸いた。民主化は、世界からビジネスを呼び込む上で欠かすことのできない「約束」なのだ。軍政下の発展はあり得ない、と父親は説いた。「世界が見ている。私たちは非力ではない」

 その日の日記に「!」が並ぶ母国語の記述があった。意味を尋ねると、彼が日本語で、強い口調で読み上げた。「僕は何をすべきなのか!!!」

 私たちは、何をすべきか。

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