日々小論

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 阪神・淡路大震災を受けて、ある建築家が発言した。世界的大家のその人は、復興の進め方についてこう語った。

 海上に鉄板を張って住宅を建て、被災者に移ってもらえばいい。そうすれば空いた土地で新しい都市建設が進められる。

 海に浮かぶ住宅群と、地上に誕生する生まれ変わったまち。鉄腕アトムなど昭和のSF漫画に出てきそうな風景である。

 漫画や映画なら、自由な想像を膨らませるのは楽しい。子どもの頃、超高層ビル群を自動車が空中飛行する雑誌のイラストに胸躍らせた記憶がある。建築や都市計画の可能性を追究する挑戦の意義は理解できる。

 未来志向の発想で異彩を放ったこの建築家は、震災でも実現可能性にとらわれない、型破りなプランを提示して見せた。

 ただ、被災地では多くの人が家を失い、大切な人を亡くし、明日への不安を抱えていた。

 立ち上がろうとする人、立ち上がろうにもできない人…。被災者が歩む道のりや時間の流れは一様ではない。どれだけの被災者が、海に浮かぶ人工住宅に進んで移り住むだろう。

 本紙記事によると、震災後、神戸市の都市計画部局も「不幸な災害を千載一遇の機会と捉え(中略)都市問題の解決を図る」という言葉を文書に記し、再開発などの事業化を急いだ。都市という「器」に目が行けば、そこに生きる人の姿は視野に入りにくくなるものなのか。

 被災者は住まいの確保に奔走し、何とか人生を立て直そうとする。復興とは一人一人が生きる軌跡の束から現れるもの。そう指摘するのは神戸大学大学院の平山洋介教授だ。

 人よりも「器」を優先する災害復興があるとすれば、それは何を目指しているのだろう。

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