日々小論

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 コロナ禍で生活保護を巡る議論が活発化している。菅義偉首相は「最終的には生活保護という仕組みもある」と発言し、苦しい中で何とか生活を立て直そうと踏ん張る人々の感情を逆なですると批判が高まった。

 こんな時にも「まず自助」の持論を強調する首相の姿勢は、先行きへの不安を高めるばかりではないか。

 思い出すのは4年前、神奈川県小田原市で発覚した「ジャンパー事件」だ。生活保護担当職員が「不正受給はクズ」などの言葉がプリントされたジャンパーを着て、10年にわたって業務に当たっていた。人権意識に欠けると激しい非難が市に浴びせられる一方、不正の取り締まりを求める声も寄せられ、市民を二分する大問題となった。

 学ぶべきは、小田原市がこの問題にどう向き合ったかである。最も安易な方法は、全責任と改善策の検討を担当者と当該部署に押しつけることだろう。

 だが、市は元受給経験者を加えた有識者検討会を設け、公開の場で、背景にある生活保護行政の問題点を徹底的に議論した。提言を受け、利用者の視点で業務を見直した。職員の専門性と自信を高める研修、全庁的な意識改革などにも取り組み、その進捗(しんちょく)状況を公表している。

 検討会の報告書は、問題が10年間も見過ごされていた点から、支援を必要とする市民への全庁的な冷淡さや、担当部署の庁内での孤立をあぶりだした。生活保護を巡る分断の深さを指摘して示唆に富む。

 自治体は「喜びと悲しみを分かち合うプラットフォーム」。事件を乗り越え、差別や偏見に苦しむ人たちに希望の光をともせるかは「いまを生きる者たちの意志である」。切々と説く報告書の言葉が今、心を打つ。

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