日々小論

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 「被災地と祭り」というテーマにひかれて、国立民族学博物館(大阪府吹田市)で開かれている特別展「復興を支える地域の文化」に出掛けた。

 獅子舞。虎舞。神楽に念仏踊り。東北の郷土芸能を映像や衣装で紹介するコーナーはどれも興味深かったが、驚いたのは10年前、東日本大震災後の「祭り再開」に向けた地元の立ち上がりの早さである。中には、住民がまだ避難所暮らしをしている段階で、準備を始めたところもあったという。

 そういえば、と26年前の夏を思い出す。阪神・淡路大震災の発生からわずか半年余り、更地の広がる下町のあちこちで地蔵盆の光景を見た。

 お地蔵さんに手を合わす。子どもたちに菓子を配る。地震前と同じように行う地蔵盆。そこに「これからもこの町で」という人々の切なる願いがこもっていたように思う。当時の新聞をめくれば、自宅より先にほこらを再建したり、焼け跡の土で地蔵をつくったりしている。

 その翌年。ある地域の秋祭りで十何年ぶりかに神社のみこしを担ぐと聞き、準備風景の取材に行った。復興まちづくりの進め方をめぐって住民が対立し、集会では怒号が飛んでいたころである。「だからこそ一緒に」と、つながり再生の象徴として復活したのがみこしだった。

 取材中、ある男性が別の住民を指して「〇〇ちゃんは…」と下の名で親しげに呼ぶのを、やや意外な心持ちで聞いた。まちづくりの話し合いでは時にぶつかり、最も仲の悪そうに見えた2人だったからである。

 自分は震災後の町の一面しか知らない。そのとき、当たり前のことに気付いた。どちらも同じ町に育ち、同じ祭りに親しんできたのだと。

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