日々小論

  • 印刷

 今春、女優の黒柳徹子さんの著書「窓ぎわのトットちゃん」(講談社)が刊行40周年を迎えた。小学校を退学になり、たどり着いた「トモエ学園」の思い出がつづられる。「ちょっと困ったお子さんを持つ親も、どうにかなると感じてもらえると思います」。先日、オンラインで会見した黒柳さんの言葉だ。

 「君は本当はいい子なんだよ」と、声を掛け続けた校長先生との出会い。あらためて読み直して、親以外の大人に認められること、受け入れられることが、子どもにとって大切な経験なのだ、と実感させられる。

 「トットちゃん」は世界で2371万部が発行されたという。本を手に取り、励まされた親の中に、台湾のIT政策を推し進める若き担当大臣、オードリー・タン氏の両親がいる。優れた知力があるものの周囲となじめず、いじめなどが重なって不登校になったタン氏の子育てに悩んでいたとき、愛読して影響を受けたそうだ。

 20年ほど前、私もこの本に励まされた親の一人だった。うまくコミュニケーションが取れず、学習面でもつまずいていた長男と週に1度、神戸市の「きこえとことばの教室」に通っていた。待合室の本棚にあったのが「トットちゃん」だった。

 長男は毎回、楽しみに通った。放課後、自分のペースで補習授業を受け、先生と汗だくになって遊ぶ。合わせて通った市教育委員会の感覚統合の運動教室ではボランティアの学生とくたくたになるまで体を動かし、はじけるような笑顔を浮かべた。

 どちらの教室も、長男にとって「トモエ学園」のような場所だったと思う。彼も今のところ、どうにか独りで生きている。たくさんの人に関わってもらい、受け入れてもらって。

日々小論の最新
もっと見る

天気(5月15日)

  • 25℃
  • 19℃
  • 70%

  • 29℃
  • 16℃
  • 60%

  • 27℃
  • 19℃
  • 50%

  • 29℃
  • 18℃
  • 60%

お知らせ