日々小論

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 以前、テレビ番組が実験をした。繁華街でオレンジを詰めた袋を落としてみるのである。

 オレンジは路上に散乱し、拾い集めても1人では追いつかない。そんな姿を目にしたとき、通行人はどんな反応を示すか。

 舞台はパリやニューヨークなどの大都市。人々の反応に随分違いがあることが分かった。

 ある都市では、多くの人が駆け寄り拾い集めてくれる。別の都市では人々が横目で見ながら通り過ぎる。拾う、立ち去る、遠巻きにする…。その割合はどこも微妙に異なっていた。

 公共の場で他人との距離をどう取るか。どんな場合に手を差し伸べればいいか。行動の線引きには、個人差だけでなく、地域差も見受けられた。

 頼まれない限り、他人と距離を置く方が失礼でなく、無難とされる社会もあるだろう。

 ただ、ほとんどの都市で人々は「自分はどうすべきか」葛藤しているようにも見えた。

 それだけに、ニューヨークの路上でアジア系の女性が男に蹴り倒され、重傷を負った事件は衝撃である。犯行を目の前で見たマンションの管理人らは女性を助けず、事件後にビルのドアをゆっくり閉じた。その様子が防犯カメラに残っていた。

 テレビ番組では、ニューヨークはオレンジを拾う人が多い街だったと記憶する。だが今回、負傷した女性を、目撃者は身を引くようにして放置した。

 コロナ禍でいつも以上に助け合うべき状況で、逆に他人に冷淡、冷酷になる。一部の政治家があおった人種的偏見の影響もあるのだろうが、一人一人が内なる葛藤まで失っては後がない。

 手を差し伸べる連帯心は、国や地域を問わず、誰もが持っている。オレンジはきっと今日もどこかで転がっているはずだ。

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