日々小論

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 私はどんな17歳だったっけ。この春、二十数年前の自分を何度も思い返した。

 記憶を刺激されたきっかけは、神戸市長田区にある定時制の湊川高校を舞台にした連載だ。1月から先輩記者と通い、生徒や先生たちを取材した。

 失礼ながら、夜間の定時制といえばヤンキーが集う場所というイメージだった。実際に教室をのぞけば、マイペースな子が多い印象。先生に「やんちゃ」と言われる生徒もいたが、みんな先生との距離が近く、校長室にも自由に出入りしていた。

 家族の前から姿を消し、行方知れずだった子が数カ月後にふらりと登校したり、中退した子が数年後に再入学したり。耳にした数々のエピソードから、同校の懐の深さを感じた。

 生徒たちとの雑談から、思わぬ議論になったことがあった。ある男子生徒が言った。「平等な社会なんてあり得ないでしょう。声を上げるのはいいけど、世の中そんなにポンポン変わらない」。彼は諦めていたのではない、憤っていた。射るようなまなざしにドキリとした。

 「お金があるか、ないか、とか。みんな人生のスタートが一緒じゃない」「頑張っても報われない人もいる。社会がそっと背中を押さないと」-。他の生徒たちの言葉も胸に刺さった。

 17歳の彼らは分かっている、この理不尽で不寛容な社会を。生きることにきれいごとなんてない。そう言われた気がした。

 ただ、彼らに悲壮感はない。夢を問えば、技術者や酪農家、簿記の資格を取る、親孝行したい…。取材後の足取りは毎回軽く、夜空を見上げて帰った。

 これから春が来るたび、胸に問うだろう。17歳の春、私自身が目指した大人になれているのだろうか、と。

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