日々小論

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 人生の新たな門出に立つ人の取材は楽しい。希望にあふれたドキドキをお裾分けしてもらった気持ちになる。

 経済部の記者だったころ、ほぼ毎年入社式や入庁式に足を運んだ。今年は別の取材があり、後日、新社会人たちの記事を本紙で探した。

 多くの地域版が市町の辞令交付式を報じていた。新年度の定番ネタだが、自治体の採用が多様化していることに驚いた。

 明石市には66人が入庁した。年齢は10~50代と幅広く、半数以上は社会人経験者だ。代表で辞令を受け取った女性(55)は大学卒業後に社会福祉法人で32年間働き、障害者支援に携わった。経験を買われ、保健所の相談支援課に配属された。

 三田市の新入職員19人のうち2人は「就職氷河期世代枠」。その一人、派遣やパートで働いてきた女性(42)は「頑張ってもかなわないことがあり、頑張れない人もいる。そんな人たちに寄り添いたい」と語った。

 近年、地方自治体の人手不足を痛感することが増えた。コロナ禍による保健所のパンクは深刻だ。自然災害時に役所は被災者対応に追われ、被害状況の把握がなかなか進まない。土木や建築の技師がいない市町村は全国で3割に上る。

 2000年代、行財政改革の名の下で公務員が大きく減らされた。それが響いている。日本総合研究所(東京)の蜂屋勝弘・主任研究員は「処方箋」として、業務のデジタル化、サービスの共同化や広域化を挙げる。

 加えて「『役人は楽をしている』などと根拠なくバッシングする風潮を改めた方がいい」と蜂屋さん。同感だ。

 マスク越しに緊張が伝わってくる辞令交付式の写真に、心の中でエールを送った。

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