日々小論

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 女優浪花千栄子をモデルにしたNHKの連続テレビ小説「おちょやん」が佳境に入った。

 ドラマのホームページを見ると、主演の杉咲花さんが主人公・千代の衣装のまま、大阪の街を歩く写真の特集があった。その中で心斎橋の大丸を背景にした1枚に目が留まった。

 大丸心斎橋店は、関西学院の校舎などを手がけた建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズによる名建築として知られる。アールデコやゴシック風の装飾が見事で、完成は1933(昭和8)年。千代が「鶴亀家庭劇」で活躍していた時代だ。

 私事になるが、幼少期にこの百貨店の近くに住んでいた。千代=千栄子が若いころに来ていたかもしれないと思うと感慨深く、往時が身近に感じる。洋風建築と日本髪、着物姿の杉咲さんが違和感なく見えてきた。

 同店は老朽化のため外壁と装飾の一部を除いて改築され、一昨年に再オープンした。外観を残す手法は旧三菱銀行神戸支店や神戸地裁などに使われ、専門家らから批判の声もある。

 確かに本当の保存とは言えないだろう。神戸・御影公会堂のように、できるだけ変えずに改修するのが望ましい。とはいえ個人的な思い出があれば、外観だけでも残るとほっとする。それほど壊される例が多い。

 尼崎市のユニチカ記念館や加古川図書館などもいま、解体の危機にある。保存にはコストもかかるが、街の歴史を語る建築は可能な限り残してほしい。

 百貨店の風景が千代と私たちをつなぐように、建物には都市の記憶を蓄積する力がある。古いものを大切にしつつ、同時に100年後に「残したい」と言われる新しい建築にも期待したい。そうすれば都市の厚みはさらに増すと思う。

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