日々小論

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 丹波篠山に生まれ、自然と共に育ち、最後は故郷の空へ旅立った。先月、97歳で亡くなった霊長類学者の河合雅雄さんだ。

 「サル学」の権威は晩年、帰郷して自然再生に取り組んだ。三田市の兵庫県立人と自然の博物館長、丹波市の丹波の森公苑長などの要職を担い、常に地元の人と一緒に汗を流した。専門家としての視点に加え、ユーモアで人々を引きつけた。

 自身を「丹波の山ザル」と称した。チョウの保全に取り組む際は、「山遊びを手伝ってくれないか」と仲間を募った。高齢となり歩行補助車を使い始めると、「僕のロールスロイスなんだよ」と笑いを誘った。

 その人間性の原点は育った家庭にある。河合家の雰囲気は、実弟で心理学者の故・隼雄(はやお)さんが多くの著書に残している。

 男ばかりの6人兄弟は文学や音楽、映画の話で盛り上がった。恋愛論になると母親も輪に入ってきた。現代の家族の話ではない。日本が戦争に突き進んだころで、河合さんの兄も出征している。しかしこの家庭に時代の暗さは感じられない。

 毎年、クリスマスプレゼントも届いたという。戦争が激しくなると、子どもたちはサンタクロースは西洋、すなわち敵国に関係する人だから無理だろうと心配した。だが父親は言った。「日本には大きな袋を背負った大国主命(おおくにぬしのみこと)という神様がいる。大国主命に頼んでみる」と。翌朝、プレゼントは届いた。

 新型コロナの影響で外出機会が減り、家で過ごす時間が増えた。家族団らんでのユーモアほど子どもの不安を和らげるものはない。河合家の逸話はその大切さを教えてくれる。

 河合さんはあちらの世界で、家族と再会を果たしたことだろう。その会話を聞いてみたい。

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