日々小論

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 元官房長官、野中広務(ひろむ)さんの話である。晩年というから、政界を退いてからのことだ。

 散歩中、公園に3人の路上生活者(ホームレス)がいるのに気づいた。野中さんは話しかけたそうだ。どうしてホームレスになったのか、家族はどうしているのか。

 年末。野中さんは「家族がいるなら、正月には帰ったらどうだ」と3万円ずつ渡した。

 年明け。1人が戻ってきた。しかし2人の姿はなかった。

 「『影の総理』と呼ばれた男」(菊池正史著)の一場面である。菊池さんも書いているが、3万円でホームレスの問題が解決するはずもない。戻ってこなかった2人は、別の場所へ移っただけかもしれない。

 しかし、暮らしに窮した人がいたら何とかしたい。できる範囲で手を差し伸べたい。やむにやまれぬ真情を3万円に見てしまう。

 東京地検特捜部が菅原一秀・前経済産業相を公選法違反(寄付行為)の罪で略式起訴した。香典や祝儀などの名目で、総額は約80万円である。単純に回数で割れば、1回につき数千円から1万円前後か。

 政界で「立たぬ札束は、はした金」と言われたことがあった。本当かどうか知らないが、300万円でやっと立つと。

 この金銭感覚は理解できない。いや、額の多い少ないではなく、当たり前のようにカネを配り、有権者が突き返さずにもらっている現実も理解できない。

 カネで心を買う政治は、例外中の例外だろうか。ばれないだけで、中央であれ地方であれ、政治の世界で悪弊が生きているなら、なんと志が低い。

 見返りを求めない。自分のためでもない。野中さんの3万円が、おとぎ話のように思える。

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