日々小論

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 二つだけ真っ赤なおしゃれなボタンが付いている-。そのブラウスなどの写真の印象を、作家の小川洋子さんは語った。

 「洋服がどれもとってもかわいらしい。デザインといい生地の柄といい。あの時代は、みんな薄汚れたモンペを着ていたのかと思っていました」

 西宮市大谷記念美術館で個展を開いている写真家石内都さんと、同市在住の小川さんが4月に対談したときの言葉だ。

 ブラウスの写真は、2007年から石内さんが続けるライフワーク「ひろしま」の1枚。布地には染みが点在している。おそらくは血の痕だろう。

 「ひろしま」は、広島の原爆で被爆した人たちの遺品を撮影したシリーズだ。透過光に浮かんだワンピースなど、戦時中とは思えない華やかさがある。

 一部が無残に裂け、ちぎれ、染みがあることを除けば今の服と変わらず、着ていた人のことを想像するといたたまれない。小川さんは「洋服の中の空洞が迫ってくる」と表現した。

 遺品を写すとき、石内さんは「美しく撮ってあげよう」と思う。身にまとうものは、その人自身を表すものだから。

 「彼女たちは原爆が落ちる前までは普通の暮らしをして、おしゃれをしていたんです」

 5年前に公開されたアニメ映画「この世界の片隅に」でも、原爆が投下されるまでの広島の街が描かれていた。焼け野原の写真や映像からはうかがいしれなかった、戦災前の風景を想像することができた。

 今年も「原爆の日」が近づいてきた。76年前の夏まで、広島にも長崎にも人々の日常があった。それを一瞬にして奪い去った核兵器の恐ろしさを再確認するとともに、目の前にある日常の大切さをかみしめたい。

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