日々小論

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 週末、「表現の不自由展かんさい」が開かれた大阪府立労働センターを訪れた。警備の警察車両が取り囲み、日の丸を掲げた街宣車が大音量で走る中、整理券を求める列に加わった。

 到着したのは開場1時間前の午前9時だったが、すでに長蛇の列が裏側にまで延びていた。照り付ける日差しと、街宣車の暴力的なまでの音の圧力にさらされながら、じっと並ぶ。ようやく整理券代わりの紙片を手にしたのは、午前11時前のこと。この間、高齢の男性が熱中症で倒れ、搬送された。

 午後、持ち物検査と金属探知機のチェックを受け、会場に入る。従軍慰安婦を象徴した「平和の少女像」、昭和天皇の肖像を使った作品を燃やす映像、福島第1原発事故をテーマにした写真などを見て回る。

 会場内でも、拡声器で開催反対を唱える抗議の声が聞こえる。その中で、ほとんど声を発することなく、入館者はじっと作品に見入っていた。騒然とする会場に駆けつけ、何かを感じ取ろうと努める人たちの姿は作品以上に、印象に残っている。

 今年、各地で企画された「不自由展」は、東京が抗議を受けて延期に、名古屋は爆竹のようなものが送りつけられて会期途中で中止になった。大阪も安全の確保が難しいとして会場の利用許可が取り消されたが、大阪地裁、高裁、最高裁の司法判断が開催を後押しした。府知事も「法的な決定には従わざるを得ない」とコメントした。

 暴力や圧力を伴う抗議に厳然と対処する警察と行政。主催者の意図に応じて会場を埋める鑑賞者。その背後にはコロナ禍の入場制限で、作品を見られなかった多くの人が控える。

 ようやく「表現の不自由展」の形が整った。ようやく。

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