日々小論

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 ノドに何かがつかえたままの気分、というのが間々ある。例えば、この叙勲。

 カーティス・ルメイという米軍人がいた。太平洋戦争時の司令官である。

 うっすら覚えていただけの名前がくっきりと記憶に焼きついたのは、保阪正康さんの「昭和史の大河を往く 第四集」を読んだときである。

 「東京大空襲をはじめ、各都市への無差別じゅうたん爆撃の提唱者であり、『日本を焼きつくせ』との命令を発したアメリカ空軍の責任者」

 とある。

 ところがその将軍へ、日本政府は勲一等旭日大綬章を贈っていた。1964(昭和39)年の暮れだから、前回の東京五輪があった年である。理由は

 「航空自衛隊の育成ならびに日米両国の親善関係に終始献身的な労力」

 もし米国が敗れていたら「私は戦争犯罪人として裁かれていた」と語っていたそうだ。その将軍をたたえたのだから「東京大空襲は正しかったと政府が公認した」。歴史的にはそうみなされるかもしれないと、保阪さんは考えてしまう。

 「勲章-知られざる素顔」(栗原俊雄著)も、この問題を取り上げている。批判がいつまでも収まらないので、叙勲の担当部局は「ゾンビ」と呼んでいる、とも。

 佐藤栄作首相の時代である。表には出ないやりとりが日米間であったかもしれない。不可解極まる叙勲の内幕を知りたくても、きちんと説明できる人は、もはやいそうにない。

 週をまたげば8月。多くの命を奪った戦争を振り返り、追悼のこうべを垂れる月だ。

 鎮魂の夏というのに、ノドにつかえるものが消えない。

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