日々小論

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 演劇は、観客が劇場に入って初めて完成する。改めて実感した1時間半だった。

 劇団四季の新作ショー「The Bridge~歌の架け橋~」の神戸公演を見た。

 舞台の幕が上がるや、マスク姿の観客が大きな拍手を送る。呼応して、俳優たちのダンスや歌声が輝きを増していく。

 ベテラン俳優が朗々と語る。

 「人生を生きるには夢が必要だ。苦しいとき、悲しいときはここへいらっしゃい。寂しいとき、うれしいときもぜひ。劇場は夢をつくり出し、人生を映し出す、大きな鏡です」

 赤川次郎さん原作「夢から醒(さ)めた夢」の一節だ。コロナ禍で苦境に立たされる劇団。劇場で見る大切さを痛感した観客。思いが“架け橋”を行き交う。

 ショーは四季が過去に上演した作品の歌やダンスをメドレー形式でつなぐ。昨年7月、東京の新劇場の開場を飾るはずだった。だがコロナの感染拡大で、公演は大幅に延期された。

 この間、ミュージカル「美女と野獣」の楽曲「人間に戻りたい」が急きょ追加された。魔法でポットや時計に変えられた召し使いたちが、元の姿に戻る日を待ち望む希望に満ちた歌だ。

 日々の小さな喜びを大切にしたいと願う歌詞に、当たり前が当たり前でなくなった世相が重なり、今の私たちにより強く響く。同じ歌詞でも感じ方がこうも変わるのか、と驚きさえ。

 コロナ禍で、演劇やコンサートなどがライブ配信されるようになった。とはいえ舞台の高揚感や緊張、喜怒哀楽は、演じ手と観客が同じ空間を共にしてこそ分かち合えるもの。配信は十分な代替品にはなり得ない。

 このショーは秋まで全国を巡り、舞台を上演できる喜びと夢を、人々に届けていく。

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