日々小論

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 国や地域を背負って五輪に臨む心の負担を「世界が肩にのしかかってくるような重み」と表現した金メダリストがいる。

 今は新型コロナの感染拡大で練習すら思うようにできない状況である。家族やスタッフらとも距離を置かねばならず、周囲の期待や重圧の中で孤立感を抱く人が少なくないようだ。

 うつ状態に苦しんでいたというテニスの大坂なおみ選手の五輪前の告白が一石を投じた。東京五輪では米女子体操のエース、シモーン・バイルス選手が「精神的ストレス」を理由に団体戦を途中から棄権した。

 コロナ禍の五輪は、あまり公にされなかった心の問題を改めて考える機会にもなった。

 バイルス選手は語っている。「以前のように自分を信じられない」状態では他の選手の足を引っ張ると判断したと。「自分のためであるべき」体操が、いつしか「他人を喜ばせるようにやっている」と感じたとも。

 今はチームや国よりも自分を大切にしてほしい。周囲がなすべきは、再起を目指す彼女を温かく見守ることだ。

 オーストラリアのオリンピック委員会は今回、メダル目標を掲げていない。数値が選手の負担になりかねないからという。

 元競泳金メダリストで選手団副団長を務めるスーザン・オニール氏は、豪紙の取材に「ドゥ・ユア・ベスト(最善を尽くせ)」の呪縛からも選手たちを自由にしたいと述べている。

 最善の結果が得られなくても競技者はおのずと100パーセントの努力をする。それはスポーツが楽しいからであって、「死ぬか生きるか」のように周囲が迫る問題ではない-。

 その表明は競技に臨むアスリートの心を軽くしただろう。呪縛からは自由でありたい。

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