日々小論

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 「不条理」を新明解国語辞典で引くと「事柄の筋道が立たないこと(様子)」とある。

 広辞苑を引いて「実存主義の用語で、人生に意義を見いだす望みがないことをいい、絶望的な状況、限界状況を指す」のくだりに目がとまる。

 先日、神戸市内の喫茶店主の話を聞きながら、頭に浮かんだのが「不条理」の3文字だった。

 コロナ禍の緊急事態宣言で商売が成り立たなくなり、税理士の助言で「一時支援金」を申請したが、書類の不備ということで受理されない。コールセンターで「何が足りないのか」と聞いても、「ここでは分からない」と返ってくるだけ。「3回申請したけど手の打ちようがない。もうあきらめた」とぽつり。

 同じように苦しむ個人事業主らの窮状を報じた本紙夕刊を手に、「ほんま、ここに書いてある通り」と漏らした。記事では記者の取材に対し、担当する中小企業庁が「不正受給防止のため厳正な資料を求めている」とする一方、「個別の対応は困難で、複数の定型文メールで対応している」と答えていた。本当に人を救う気があるのか。

 「震災(阪神・淡路)のときは若かったし、走り回って店を再建したけど、もう年取って、あかんわ」。そう言って、店主がテレビの五輪中継に目をやった。メダルを手にした選手がインタビューに答えている。「自分一人では達成できなかった」「たくさんの人の支えがあってここまでやってこられた。感謝の気持ちでいっぱい」

 中小企業経営者、飲食店主、職を失った人たち。店主と同じように支えのないまま途方に暮れる人たちは、どんな思いで五輪中継を見ていたのだろう。

 「不条理」と言うしかない。これが今の日本の現実だ。

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