日々小論

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 「三方一両損」は落語でおなじみだ。大工が落とした三両の小判を左官が拾って届けるが、大工は頑として受け取らない。言い合っているうちにお裁きとなり、大岡越前守が自ら一両を差し出し、四両にして2人に分ける、という噺(はなし)である。

 このお話、損をしながらも全てが丸く収まったのだから、皆が得したとも言えないか。

 話は大きく変わって現代。乗客の減少で苦境に立たされる公共交通機関で7月末、「三方一両得」の事業が始まった。

 阪神バスは、尼崎市の自動車教習所「尼崎ドライブスクール」の無料送迎バスの一部を、既存の路線バスで代替する。教習生には阪神バス全線で使えるフリー乗車券を発行し、その費用は教習所が負担する。

 阪神バスは固定収入の確保、教習所は運行費用の削減や事故リスク回避などの利点が期待できる。教習生にとっても乗車停留所が増えるなど便利になる。新たなコストをかけずに、公共交通機関の持続性を高める。まさに「三方よし」である。

 数年前、北海道の十勝バスは住民調査で得た結果を「バスが利用されないのは不便だからではなく、料金や乗り方が分からず不安だから」と分析。利用者目線に立った情報提供など小さな工夫を重ねて乗客を増やし、業績のV字回復を果たした。

 阪神バスの取り組みも、教習生らの「バス利用に対する不安」の解消につながれば、その後も移動手段として選ばれる価値や可能性が高まるだろう。

 公共交通をただ残すのではなく、人々の移動を支えるという本来の役割を高める。そのための知恵や工夫の積み重ねが、需要を創造し、未来を拓(ひら)く。

 三両が四両にも五両にもなれば-。お後がよろしいようで。

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