日々小論

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 先日、ある団体の活動発表会の審査に初めて参加した。経験豊富な審査員によると、内容の優劣だけでなく、主張が身についているかを見るという。例えば「原稿を読んでいる時点で失格」というから、厳しい。

 伝えたいことをそらんじられるまで練習するのは当たり前。どれだけ真剣にその場に臨んだかのバロメーターとなり、熱意は聞く人にも伝わるという。その日も、内容は優れていたが原稿を「読んだ」ために入賞を逃した出場者がいた。

 ならば、この人は完全に「失格」だろう。菅義偉首相は、広島の原爆死没者慰霊式のあいさつで一部を読み飛ばした。聞いていても意味が通じないのが分かったぐらいだから、内容が頭に入っていれば、いや事前に一度でも原稿に目を通していればおかしいと気づいたはずだ。

 飛ばされたのは、日本は「唯一の戦争被爆国」として核兵器のない世界の実現へ努力する、と訴える部分だった。国内外に欠かすことのできないメッセージである。だが首相はそのまま読み続け、原稿にのりが付いてめくれなかったと釈明した。そこからは被爆者の願いに心を寄せる真摯(しんし)さも、核なき世界を目指す熱意も読み取れない。

 最近、「首相はコロナ対策や災害対応に忙殺され疲労が蓄積している」と気遣う声が周辺から上がり始めた。昨夏、安倍晋三前首相が突然退任を表明する前にも「首相に休養を」の大合唱が起こったのを思い出す。

 厳しいようだが、体調不良や疲労は失敗の言い訳にはならない。それが国民の命を預かる首相に課された重責だろう。

 菅氏はそれに耐えられるか。被爆者が、被災者が、奮闘する医療従事者が、コロナ禍に苦しむ全ての人々が、見ている。

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