日々小論

  • 印刷

 2年続きのコロナ禍の夏、この人の被爆証言は心に響いた。9日、長崎市の平和祈念式典で被爆者代表としては過去最高齢の岡信子さん(92)が読み上げた「平和への誓い」である。

 「飛び出した内臓を抱えて立つ男性、片脚で黒焦げのまま壁に寄りかかる人、首がちぎれた乳飲み子に最後のお乳を飲ませようとする若い母親…」

 当時16歳の看護学生だった岡さんは市内の実家に帰省中、被爆し、負傷しながらも救護活動に当たった。合間には一時行方不明になった父を捜しに街に出た。その最中に目にした地獄のような光景を、一言一言絞り出すように語った。テレビ画面を通じても、核兵器の恐ろしさがまざまざと伝わってきた。

 その模様の一部が本紙でも紹介されていた。インターネット上では「胸を打たれた」などの声が相次いでいる。

 全国で被爆者健康手帳の交付を受けた人は今年3月末時点で12万7755人で、平均年齢は84歳近くになった。近年、約9千人が毎年亡くなっており、被爆の記憶の継承が大きな課題となっている。

 実は岡さんは自身の体験について長年口を閉ざしていたそうだ。多くの被爆者と同様、惨状を思い出すのがつらかったからだ。約8年前に新聞社の取材を受けたのを機に、少しずつ語り始め、被爆者代表に応募するまでになった。「後の人たちに同じ思いをさせたくない」。並々ならぬ覚悟には頭が下がる。

 「私たち被爆者は命ある限り語り継ぎ、核兵器廃絶と平和を訴え続けていくことを誓います」。岡さんがこうスピーチを締めくくるのを聞いて、バトンを受け取った気がした。その重さを感じながら、落とさないよう走りだしたい。

日々小論の最新
もっと見る
 

天気(10月20日)

  • 19℃
  • ---℃
  • 20%

  • 16℃
  • ---℃
  • 60%

  • 19℃
  • ---℃
  • 10%

  • 19℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ