日々小論

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 もう40年も前になる。中学校の行事で8月、兵庫と岡山の県境にある後山(うしろやま)に登った。途中、少し開けた場所で休んでいたとき、赤トンボの一種、アキアカネが涼しい風に乗って近づいてきた。周囲を見渡すと、無数のトンボが空を埋め、音もなく飛んでいる。今でも忘れられない幻想的な光景だ。

 なぜ、あんなにたくさんのアキアカネがいたのか-。長年抱いてきた疑問が先日、解けた。たつの市の霞城館(かじょうかん)で開かれている「赤とんぼとたつの」展(9月5日まで)を見学していて、思わず声を上げた。「8~9月は涼しい高い山の上で過ごし、オスは徐々に赤くなっていく」と説明がある。あのトンボたちは避暑に来ていたのだ。

 近頃は夏山に登ってもとんと見かけないと思っていたら、兵庫県などで個体が激減しているという。暑さに弱い、繊細な体である。最近の猛暑に耐えるのはさぞ大変だろう。

 たつの市では十数年前から、NPO法人「たつの・赤トンボを増やそう会」がアキアカネを人工羽化させ、増やす取り組みを続けている。昨年の羽化数は初めて500匹を超えたそうだ。今後は、自然羽化できる環境づくりに力を入れるという。着実な歩みがうれしい。

 たつの市では夕刻、童謡「赤とんぼ」のメロディーが流れる。訪れているときはしばし聞き入り、しんみりする。あかね色に染まる空に、あの時のように無数のアキアカネがいたら、どんなに素晴らしいことか。羽化に取り組む人らの努力で、きっと実現するに違いない。

 今年は、地元出身の詩人三木露風が「赤とんぼ」の詩を完成させてから100年の節目。この秋は、生家や霞城館などで多彩な行事が予定されている。

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