日々小論

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 辛口エッセーで知られた中国文学者、高島俊男さんが「やたらおもしろい漫画」だと随分前の書評でべた褒めされていたので、どんなんかなあと気になって読み始めた。みなもと太郎さんの「風雲児たち」である。

 “歴史大河ギャグ漫画”と銘打たれた通り、ほぼ全ページで何かしらのギャグに出合う。作者が京都出身ゆえか、上方お笑い界からの引用(亡き仁鶴さんのギャグも)もふんだんに。

 1979年にコミック誌で連載が始まり、本来は幕末群像劇のはずだった。関ケ原の戦いで「敗者」となった薩摩や長州がいかに幕府を倒すに至ったか-と、その関ケ原のシーンから始まるのだが、あれこれ話(ギャグも)が盛り込まれ、なかなか幕末までたどりつかない。それがまた面白い。

 「多くの人を救わんがために自らをなげうてる者こそが真実の武士であろうっ」(命がけの治水工事を取り仕切った薩摩藩家老)

 「どのような障害も時代を後戻りさせることはできぬ。それが文化だ。それが人間というものだ」(蘭(らん)学熱は弾圧に負けないと説いた杉田玄白)

 ギャグばかりでなく、しびれるせりふの数々が、動乱の時代を懸命に生きた風雲児たちの姿を浮かび上がらせる。

 お酒を楽しむようにちびりちびりとページをめくり、何年かをかけ、やっとワイド版全20巻を読み終えた。最終巻でついにペリーが登場し、その続編「幕末編」に手を出したところで接したのが、みなもとさんの急な訃報である。ショックだった。

 74歳。「幕末編」は未完に終わるという。今はただ、作品から教わったことをかみしめるしかない。そう、歴史とはいつも「未完」の物語なのだ。

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