日々小論

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 打撃コーチとしてたくさんのプロ野球選手を育てた新井宏昌さんと会ったのは、四半世紀も前のことだ。

 インタビューのテーマは「イチローは本物か」だった。まったくの愚問で、新井さんは一言、「ものが違います」。

 どう違うかをうかがううち、若い選手が陥りがちなことに話題は移った。これがとてもおもしろかった。

 プロに入る野手は、高校、大学、社会人では強打者として知られた若者ばかりだ。どうしても本塁打を狙ってしまうから、こう注意する。「それでは1軍に出られないよ」

 上には上がいる。パワーなら外国人に勝てない。これがプロの世界だ。「カーン」と響いても、フェンス手前で失速したら1円にもならない。だったら短いバットにして、振り切ろう。外野の前に落とそう。それができたらプロらしい給料をとれるよ、と。

 自分を知る。自分を変える。すべてはここから始まる。

 プロ野球・西武の栗山巧外野手(育英高出身)が史上54人目の2千安打を達成した。関連記事に目を通すうち、新井さんの言葉が重なった。

 強打、堅守、俊足が買われてプロ入りした。でも一緒に入団した選手のスイングを見て、違いにがくぜんとしたそうだ。上には上がいる、と。

 無理に引っ張らず、中堅から反対へも打つ。そんな広角打法をコーチと練り上げた。2千安打目も、緩い変化球に崩されずに放った左前安打である。

 プロに入ることとプロになることとは違う。野球以外にも通じる話だなあと思いながら、紙面の写真に見とれた。左前に流し打った瞬間である。

 渋くて、美しい。

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