日々小論

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 「学園長が亡くなりました」。流通科学大学(神戸市西区)の職員から携帯電話に一報が入ったのは、2005年9月19日の夜だった。取材先との会食で生ビールを一口飲んだところで慌てて会社へ戻った。

 同大学の創設者にして学園長、すなわちダイエー創業者の中内功(いさお)さんの訃報に、編集局は騒然としていた。神戸を一大拠点に日本でチェーンストアの仕組みを築き、「流通業界の革命児」と称された中内さんの83年間の人生を記事にしながら、一つの時代の終わりを痛感した。

 それから16年。ダイエーはイオンの完全子会社となって久しい。神戸・三宮センター街のユニクロやZARA(ザラ)が立つ場所に、かつてダイエーの「男館」や「ジーンズ・ジョイント館」などの店舗群があり、一帯が「ダイエー村」と呼ばれていた頃が幻のようだ。

 中内哲学ともいえる「良い品をどんどん安く」が威力を発揮したのは、物価が上昇する時代だったからだ。駅前などの一等地を購入し、土地の値上がりを前提に銀行から資金を借りて規模を拡大したが、その手法はバブル崩壊できしみ始めた。

 晩年の中内さんを何度か取材した。巨額の負債を抱え、経営から身を引かざるを得なくなった顛末(てんまつ)には触れようとしなかった。こちらの突っ込み不足もあったと思う。一度だけ「ホテルや球団など余計なことに手を出したからあかんと言われるが、流通の近代化には貢献できた」と淡々と語った。亡くなる前年のことだ。

 来年は中内さんの生誕100年に当たる。彼の生きざまを通して日本の消費社会の過去と現在を見つめ、暮らしや地域経済の未来像を占えないか。そんなことを考えている。

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