日々小論

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 今も昔も、猫は人間の同志らしい。多くの小説に登場するし、最近はインターネットサイトのキラーコンテンツ(爆発的に人気のある情報)だ。

 飼い猫では、解剖学者、養老孟司さんの「まる」が有名だった。昨年暮れ、寝たきり生活を経て18歳で亡くなると、全国ニュースになったほどだ。

 なぜ猫は人間に愛されるのか。養老先生は言っている。

 「生きることの『物差し』ですよ。必要なものを手に入れて、あとは寝ている」

 「お互いに生きているのを確認して、言葉のない会話が終わる。それ以上なにか言うことがありますか。それが猫のいる生活のいいところかと思う」

 わが家にも老猫がいる。

 ネギという。生まれてすぐ尼崎の飼い主からもらった。雑種、19歳。人間なら90歳以上だ。

 わが19年を振り返ると、生活のどこかにネギがいた。

 寝ていると胸の上に乗ってくるから、苦しくて何度も払いのけたし、長い旅行も控えるようになった。老境に入り、行動範囲がどんどん狭くなった。白内障が進み、ヨロヨロと歩く。

 それでも好物のかつお節かマグロの切り身を出せばぺろりと食べた。20歳のお祝いは家族でできると思い込んでいた。

 そのネギばあさんが、2週間ほど前から急に衰弱した。

 見る見るうちに骨と皮だけになり、慌てて病院に連れて行くと「明日ならだめだったかも」と若い獣医師に教えられた。

 日常に溶け込みすぎて、意識することもなかった存在が、急に輝きを増す。勝手な話だ。

 無理はしないでいい。言葉のない会話を交わし、閉じていく命を静かに見つめようと思う。

 わが家に来てくれたことに、心から感謝しながら。

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