日々小論

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 相手の表情が、聞いた話以上に心に残ることがある。この夏、五輪の柔道メダリスト会見で、誇らしげに金メダルを掲げる阿部一二三(ひふみ)選手と詩(うた)選手を撮影しながら、詩選手を初めて取材した時のことを思い出した。

 2013年の夏。兵庫県中学総体で、1年生にして頂点に立ったのが詩選手だった。尼崎の試合会場で声を掛けると、優勝のうれしさや兄への憧れを生き生きとした表情で語った。「お兄ちゃんを抜かしたかった」。一二三選手の中学1年時の実績を超えたことを喜んだ。

 印象的だったのが、意欲みなぎる目の輝き。読者に少しでも伝わればと思いながら、顔写真を撮ったのを覚えている。

 まだ体は小さかったが、監督が勧める48キロ級ではなく、今と同じ52キロ級で出場していた。「将来、この階級で世界に出ていくから」。有言実行し、8年後の東京五輪で栄冠。あの時の瞳の輝きには、それだけのエネルギーが宿っていたのだろう。

 目といえば、五輪の会見の2日前にこんなことがあった。

 菅義偉首相の会見で、新型コロナの医療体制確保の方策を質問した。併せて、感染再拡大を招いた責任について「前の記者の質問に答えていない」と回答を求めると、表情が変わった。

 「今、発生しているこの波をできるだけ早く収める。そのことが一番の私の責任だと思っています」。こちらをにらむように話した時だけ首相の目は熱を帯びて見えたが、それもつかの間、医療体制について答え始めた途端、冷めてしまった。

 コロナとの闘いが続く中、わずか1年での退任。国民にメッセージを発する機会は何度もあった。エネルギーを瞳に宿しながら、難局に立ち向かう意欲を伝えてもらいたかった。

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