日々小論

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 4月末に電話でお話したのが最後になった。今月89歳で亡くなった経済評論家、内橋克人さんは本紙客員論説委員として大型評論「針路」シリーズを1997年のスタート時から書き続けた。昨年10月までの23年間で計57本に上る。

 締め切りが迫った原稿を催促しようとかけた電話だった。今回のテーマは、独自の新型コロナ対策で注目された「スウェーデンの選択」だという。欧米各国のようなロックダウン(都市封鎖)をせず一時は深刻な感染拡大を招いたが、国民の評価は比較的高い。その背景を検証し、国民の命と権利を守る国家のあり方を解き明かしたい-。

 「まだ取材が必要です。このテーマを中途半端に手放したくない」と内橋さんは粘った。

 誇り高き論客が納得のいくまで思考を重ねて導き出す「針路」を、締め切りを延ばしてでも読みたい。私はその誘惑にあらがえず、貴重な原稿をもらい損ねた。ずっと後悔するだろう。

 今、神戸新聞電子版ネクストで内橋さんが書き継いだ「針路」を一挙掲載中だ。「現実直視を避ける楽観主義と、それに煽(あお)られた空(から)元気ほど社会にとっての厄災はない」(2000年2月)、「危機に立つ真(ま)っ当(とう)な市民を支援・救済する制度が、足腰強く整えられているかが社会の本質を見抜くバロメーターとなる」(1998年5月)。ぶれない視点が時を超えて社会の病理を照らし、突き刺さる。

 元神戸新聞記者の大先輩でもある。権力監視の使命を怠り、自ら権力と化したかのようなマスメディアには厳しく、長い電話の最後に「地方紙の踏ん張りどころです」と励まされた。

 ふがいない後輩へのエールを受け止め、読めなかった「針路」を探し続けようと思う。

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