日々小論

  • 印刷

 水俣病問題を世界に伝えた写真家、ユージン・スミスの写真集「MINAMATA」を原案にしたジョニー・デップ製作・主演の映画が公開された。

 それに合わせ、土本典昭監督のドキュメンタリー映画「水俣-患者さんとその世界-」(1971年)と「水俣一揆-一生を問う人びと-」(73年)が、リバイバル上映されている。大阪での上映は30日までだが、土本作品はDVDで手に入る。

 「水俣一揆」は、熊本地裁の水俣病訴訟で勝訴した患者たちが、公害の原因企業・チッソに補償を迫る交渉を記録する。このときの様子はユージンも写真集に収めている。

 「親の命が欲しい。子どもの命が欲しい。体が欲しい。人間はなんのために生まれてきたち思うか!」「患者の面倒ばみれんとか」「体を元に戻せ」

 実際の映像の迫力はすさまじく、チッソ幹部に詰め寄る患者の悲痛な訴えは胸に響く。

 公害の暗いイメージとは裏腹に、水俣病患者が多発した不知(しらぬ)火(い)海の沿岸は、穏やかな入り江と漁村が連なる風光明媚(めいび)なところだ。美しい自然と文化、豊かな海の幸に恵まれた地域だったからこそ、有機水銀による魚介類の汚染が悲劇となった。

 交渉の末、患者らはチッソとの補償協定締結を実現させた。だが、感覚障害などの症状があっても患者に認定されるのは非常に難しい。2009年施行の水俣病特措法に基づく一時金支給から漏れた人も少なくない。

 同法で定めた健康調査も着手されず、信じ難いことに被害の全容さえ解明されていない。

 ユージンの写真や土本監督の映画はモノクロで、古い出来事のようにも見えるが、そこに出てくる患者の何人もが存命だ。水俣病問題は眼前にある。

日々小論の最新
もっと見る
 

天気(10月20日)

  • 19℃
  • ---℃
  • 20%

  • 16℃
  • ---℃
  • 60%

  • 19℃
  • ---℃
  • 10%

  • 19℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ