日々小論

  • 印刷

 「自分に何ができるかより、何ができないかを見極めることが大事」

 コロナ禍になる前、ベテラン救急医に取材した際に救急医療の肝として聞かされた言葉だが、最近ふと気になった。一刻を争う現場で、なぜ「できないこと」を強調するのか。「できること」の方が建設的ではないのか。改めて真意を確かめると、医師は言った。「自分の限界を知れば助けを求めることができ、上司も対応できる」

 兵庫のコロナ禍の1年半を振り返るインタビュー連載「五つの波」で、キーマン計10人に直面した課題を聞いた。次の流行「第6波」や新たな感染症に備えるための論点の共有が狙いだった。そこで「できなかったこと」について聞いてみると、意外に戸惑う声が多く、「奮闘した日々に水を差された」と、ムッとされる場面もあった。

 連載では、病床確保の難しさや施設の地域連携、行政の対応遅れなど、一筋縄ではいかない課題が浮き彫りになった。コロナ禍の前から抱えていた問題が形を変えて表面化したケースもある。メスを入れれば「膿(うみ)」が吹き出してくるため、後回しにしていた宿題とも言える。

 阿鼻(あび)叫喚の「五つの波」を抜け、感染がいったん収束しつつある今こそ、数々の宿題に着手すべきタイミングと感じる。「第6波」まで、それほど時間はないかもしれない。

 9月末をもって、緊急事態宣言が解除された。感染防止策継続の呼び掛けをよそに、街には開放感が広がる。「みんな、人ごとなんですよ」。連載の取材中、社会の本音を見透かしたような医師の一言をかみしめる。

 できなかったことにこそ、目を向けたい。「喉元過ぎれば…」とならないために。

日々小論の最新
もっと見る
 

天気(10月20日)

  • 19℃
  • ---℃
  • 20%

  • 16℃
  • ---℃
  • 50%

  • 19℃
  • ---℃
  • 10%

  • 19℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ