日々小論

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 その文章はこう始まる。書き出しからしてひかれた。

 「仕事をリタイアして時間に余裕が出来たら、図書館で探したいものがあります」

 「本の雑誌」10月号の投稿欄に載っていたもので、送り主は61歳の女性である。探したいものとは、30年ほど前、地元紙で目にした短歌という。

 優秀作として掲載されていた歌に胸を打たれ、切り抜いていたのだが、なくしてしまった。内容は何となく覚えており、同じものを見たら分かる。図書館に通い、過去の新聞を探していけばきっと…。

 「これが私の老後の楽しみです」と文章は結ばれていた。偶然出合った一首をずっと忘れられず、いつかの“再会”を心待ちにしながらきょうを過ごす人がこの世界にいる-まるで小説のような話ではないか。

 ところで、同月号の特集テーマは「定年後は本当に本が読めるのか!?」だった。「文豪の全集を読みたい」「若い頃に親しんだ青春小説を読み返したい」等々、老後の読書計画をいろんな方がつづっている。

 自分もそれにならい、未来の読書をちょっと考えてみた。あれもこれもと思いを巡らす時間は楽しい半面、あの古典の名作にミステリーの傑作にと、未読の作品があまりに多いことに気づかされる。いま、読もう。

 「いい本というのは、そのなかに『いい時間』があるような本です」と、詩人の長田(おさだ)弘さんが書いていた(ちくま文庫「読書からはじまる」より)。読書の秋、そんないい出合いに恵まれたらうれしい。

 本日はノーベル文学賞の発表だそうだ。過去の受賞者の名を見れば、恥ずかしながら、これまたまずいことに気づく。

 ま、いずれ、老後に。

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