日々小論

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 先日、本紙文化面で「音象徴」なるものを紹介していた。言語学の用語だそうで、音が特定のイメージを喚起する事象を指す。例えば「t・k・b」などの子音は角張った感じ、「m・n・l」などは柔らかいイメージに結び付きやすいという。

 それで思い出したのが、タレント・友近さんの「タテトティの歌」というネタだ。誰もが知る名曲の歌詞を全て「t」音に置き換えて歌うのだが、「m」などの柔らかい音が、刺激的な「t」音になるだけで、やけにおかしい。一見ばかばかしい笑いが、ちゃんと言語学の理屈にかなっているのに感心した。

 バカリズムさんの「いろは問題」は、いろは四十七文字を組み替えて「新いろは歌」を次々と作ってみせるネタだが、これなどは詩人の四元康祐さんが詩集「日本語の虜囚」で試み、鮎川信夫賞を受けた言語実験に重なる。笑芸と現代詩、それぞれの奇才が、図らずも同じ手法に行き着いたとは面白い。

 又吉直樹さんの芥川賞受賞も記憶に新しいが、日本の笑いは近年ますます進化し、高度に文学的になっているようだ。時代と向き合い、言葉を駆使して人の感情を揺さぶる芸人が、文学の表現に近づくのは自然な流れかもしれない。国民に響く言葉を持たぬ為政者には、大いに学ぶところがあるのではないか。

 ところで、言語感覚や着想の秀逸さでは「鼻兎(はなうさぎ)」という漫画作品にも触れておきたい。

 作者は元ラーメンズの小林賢太郎さん。20年余り前のコントが非人道的だったとして東京五輪開閉会式の演出担当を解かれた人だ。漫画には兎も猫も人間も等しく許し合う優しい世界が描かれる。過去の過ちへの反省は必要だが、その全業績が否定されないよう願う。

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