日々小論

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 日系2世のミノル・ヤマサキ氏が米シアトルに生まれたのは1912年12月1日のことだ。父は富山、母は東京の出身で、生家は移民が身を寄せ合って暮らすスラム街にあったようだ。

 激しい排斥運動の中、貧困や人種差別に耐えながら育った。苦学して建築家になると、徐々に実力を発揮する。やがて米国外にも活動の幅を広げ、かつて神戸の東遊園地のそばにあった米国総領事館も手掛けた。

 そんな彼の名を一躍有名にしたのがニューヨークにあった、あの世界貿易センタービル(WTC)の設計者への抜てきである。日系人の男性として初めてタイム誌の表紙を飾るなど、まさにアメリカンドリームをつかんだと言っていい。こうした経緯はジャーナリストの飯塚真紀子さんの著書「9・11の標的をつくった男」に詳しい。

 私は学生だった三十数年前、米国旅行中にニューヨークに立ち寄り、WTCの展望台に昇った経験がある。神戸ポートタワーの約4倍、400メートルを超える目のくらむような高みに立ち、よくもこれほど大きなビルをと感心したのを思い出す。

 WTCは70年代前半の完成時には世界一の高さを誇った。20年前の米中枢同時テロで倒壊するまでは、ニューヨークでナンバーワンだった。あまりの巨大さから、「ニューヨークに対する冒瀆(ぼうとく)」などの批判もあった。それほど強烈なインパクトを与えた建物だった。

 ヤマサキ氏は86年2月6日、デトロイトで病没する。その73年間の人生で「ピラミッド以来の最大の建築物」とも称されたビルを築いた功績は、もっと語り継がれてもよいだろう。

 来年は生誕110年。国内外で再評価の動きが盛り上がることを期待したい。

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